
「ついていない、、、」
海を見るために茅ヶ崎に向かってたところ、東海道線が人身事故、、、
急遽予定を変更し、鎌倉に向かった。
海だったらなんでもよかったのだが、鎌倉到着直後、雨が降り始め、とてもではないが海を楽しめる天気ではなかった。
「天気予報しっかりしてくれ、、、」
しかし、こんなことではあきらめない。
ランチは、蕎麦屋で日本酒をたしなみ、カフェでコーヒー2杯とモンブランを、
5時間ほど時間をつぶし、天気の回復を待った。
普段、時短の配信をしているのでせっかちに思われるかもしれないが、僕はせっかちではない。
ただし、5時間待っても回復の気配がない天気に、「もう流石にあきらめるか、、、」そう思い、鎌倉駅への帰路につく。
その途中、美術館を見つけた。
1年ほど前、大人でおしゃれな男になりたいと考えた結果、美術を見る目を持ってる人はおしゃれだなと感じ、「絵を見る技術」という本を読んだ。
美術を見る目を養うために、まず本を読む。
このことからも、僕の美術センスがないことはお察しの通りである。
本はなかなか面白くはあったのだが、それで満足して美術館に行くことはなかった。
だから、美術館を見たとき
「これは、いかなければならない。」
そう感じ、美術館の扉に手をかけた。
その美術館はかなりこじんまりとした美術館であり、展示品は10品程度であった。
美術館に入ると、館内には館内員さんが1人と、僕だけであった。
館内員さんは、女性だったが、それ以上の情報を手に入れる余裕は僕にはなかった。
とにかく美術館の静かさと、館内員さんの視線で緊張していたのだった。
展示品は、よくわからない仏像に、よくわからない漆器、富士山の絵画、そして極めつけにはよくわからない壺が置いてあった。
「なんで鎌倉で富士山の絵画飾ってんねん」
そんな突っ込みが今なら出てくるのだが、その時は緊張で何も思い浮かばなかった。
緊張感と気後れで今すぐ、美術館を出たかったのだが、館内員さんになめられたくない。
その一心で、一番気になった壺の周りをぐるぐると腕を組みながら周り、必死に何かを感じ取ろうと試行錯誤した。
体感時間としては、10分以上、その壺を見続けただろうか?
美術館を楽しむ男を演じることが完了した。
そう感じ、満足して美術館を出た。
「ほっ」とため息ながら、ぱっと横を見ると、めがねが落ちていた。
なんだかわからないがすごくうれしい気持ちになった。
この眼鏡の持ち主は僕と同じく、美術品の良しあしがわからなかったのではないか?
見る力がないことを、視力のせいにして眼鏡をほっぽりだしたのかも?
そんなことを考えているとなんだかにやけてしまったのだ。
美術館は難しい、、、
しかし、意味の分からない緊張感を与えてくれるちょっと幸せで、あまりにも無駄な時間を楽しませてくれる場所だなと感じた。
次はもっと大きな美術館にいってみようか。